コア・コンピタンスはグローバル化に重要?
グローバル化を目指しているお客様に、去年から「コア・コンピタンス」のワークショップを行っています。そこで強調するのが、自社のコア・コンピタンスをしっかりと把握して、グローバル化戦略に取り入れる重要さです。
でも、そもそも「コア・コンピタンスってなに?」と言われる方々が多いので、このブログで簡単に説明します。
コア・コンピタンスってなに?
企業の活動分野において「競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力」「競合他社に真似できない核となる能力」「顧客にとって付加価値となるもの」の事。
コア・コンピタンスは、「コア(Core)」と「コンピタンス(Competence)」を繋げた言葉です。この概念を、もうちょっと詳しく考えてみましょう。
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最近本屋さんに行くと、「体幹トレーニング」だとか「体幹ランニング」関係の本が山積みになってますね。体幹とは、体の核(芯)のことで、体の土台ともいえます。それをしっかりと鍛えるメリットは多くあります。そして、この「体幹」こそ「コア」なのです。アメリカでは「コア・トレーニング」と呼んでます。
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「コンピタンス」は、「能力」です。英語では「できる人」のことを「コンピタンスがある人」というように使っています。
コア・コンピタンス = 核(芯)となる能力
では、まず最初に、人のコア・コンピタンスを考えてみましょう。
よく「己を知る」って耳にしますね。これが、「自分の強みと弱みを知る」ということであれば、言葉を変えて「自分のコアとなる能力と、そうでない能力を知る」、ともいえるでしょう。「でも、それって皆わかってることじゃないの?」と思うかもしれません。でも、以外とそうでもないように思えます。
お相撲さんからアメフト?
例えば、有名なお相撲さんで、アメフトにチャレンジした方を覚えていますか?同じように、レスリング(K-1)にチャレンジした元お相撲さんもいましたね。お二人とも残念な結果に終わりましたね。彼らが成功しなかった理由は色々考えられます。でも、私から見れば、このお二人は、自分のコア・コンピタンスを新しい分野で活かせなかったのだと思います。
バスケットボール選手から野球?
逆の例でいえば、アメリカの有名なNBAバスケットボール選手が、野球選手になって成功している事例があります。この方は、自分のコア・コンピタンスを100%活かせているのだと思います。
コア・コンピタンスは使い回しができる
実は、コア・コンピタンスは、単に「核となる能力」だけではなく、「他のことにも使い回しができる能力」という性質を持っています。例えば、最近アメリカの企業は、軍人として成功した人たちをマネージャーに雇う傾向があります。これは、軍人として成功する要素(例:組織力、リーダーシップ、逆境に強い)が、企業のマネージャーとして成功する要素にイコールすると考えるからだと思います。
企業のコア・コンピタンス = コア3
企業の差別化の三大要素、1. コア・コンピタンス、2. コア・プロダクツ、3. コア・ビジネスを意味する、私がつけた名称。
こんどは企業のコア・コンピタンスを考えてみましょう。
皆さんは、いわゆる「お相撲さん」の企業が、「アメフト」の企業に転身しようとして失敗した事例は、聞いたことがありますか?企業が、新規事業を「手放した」又は「売却した」のは聞いたことがありますか?全部が全部ではありませんが、失敗の理由は、コア・コンピタンスが活かせなかったのだと思います。
もちろん逆もあります。
企業のコア・コンピタンスの概念を最初に世に紹介したといわれるハーバード・ビジネス・レビューの記事「The Core Competence of the Corporation」では、Hondaがその代表的な成功事例に取り上げられています。
オートバイから自動車?
Hondaは、世界にも誇る日本のグローバル企業ですね。そのHondaがオートバイの市場から自動車の新しい市場に進出したときは勇気が必要だったと思います(特に日本の企業はリスク回避方なので。これに関しては別のブログ記事を書きます)。でも、この判断が大ホームランでしたね。
Hondaは、その後も、ボート、草刈り、発電など、どんどんと新市場に進出して、ホームランを打ちっぱなししています。そして、この成功の鍵が「Hondaのコア・コンピタンスを活かしたビジネス戦略にある」というのが、先ほどのHBRの記事が主張するところです。
コア3 = コア・コンピタンス x コア・プロダクツ x コア・ビジネス
では、具体的に、Hondaの成功の鍵となるコア・コンピタンスとはなんなのでしょう?
HBRの記事では、これを4つの要素に分けて説明されています:
- コア・コンピタンス(Core Competencies)
- コア・プロダクツ(Core Products)
- コア・ビジネス(Core Businesses)
- エンド・プロダクツ(End Products)
これを成長する木に例えると、こんな感じになります:
- 根(ね):コア・コンピタンス
Hondaの場合、核となる能力は、エンジンやパワートレーンに関連するノウハウともいえます。そして、このノウハウは、様々な製品で使われるエンジンやモーターを製造するときに使い回しができる能力、いわゆる「コア・コンピタンス」なのです。これが、Hondaという立派な木を支えて、栄養を吸収し、木を成長させる、根っこになる部分です。
- 幹(みき):コア・プロダクツ
Hondaのしっかりとした根っこが支える幹が、Hondaのエンジンという商品(プロダクツ)です。これは「○○用のエンジン」というよりは、「Hondaはエンジンが作れる企業」という概念的な意味を持ちます。この概念が「コア・プロダクツ」なのです。
- 枝(えだ):コア・ビジネス
この「エンジン」という幹をもった木は、様々な分野でそれを活かすことができます。Hondaの場合は、オートバイの分野、自動車の分野、ボートの分野、芝刈りの分野、発電の分野、というように枝を幅広くのばしています。この枝一つ一つが「コア・ビジネス」になります。
- 実(み):エンド・プロダクツ
そして、「Hondaと言えばこれ!」と頭に浮かぶのが、Hondaの様々な製品です。オートバイでも車でも、もしくはHondaのOEM製品でもいいです。この木の実が「エンド・プロダクツ」になります。
幹は太く、根は深く、広く
Hondaの成功事例を見ると、コア・コンピタンスで成功する鍵は、多く木を植えるのではなく、一本の木を太くすることにあるように見えます。
そして、進出する新しい分野(枝)は、太い幹から芽がでている分野であり、決してコアから外れている分野ではないのです。
実に、皆さんの企業が新しい分野に進出を考えているとすれば、このコア・コンピタンスをもとにした戦略は、自分の強みを梃にした、成功する要素が多く見方になってくれる戦略ともいえます(この戦略は、また別のブログ記事で紹介します)。
コア・コンピタンスはグローバル化でも重要
企業が、自分のコア・コンピタンスをしっかりと把握することは、その企業のグローバル化の成功の鍵にもなります。
たとえば、皆さんの会社がグローバル市場への進出を考えているとしましょう。これは、先ほどの「お相撲さんからアメフト」のように、まったく違う市場を考えている場合もありますが、多くの企業は「自分が知っていること」で勝負をしようと考えるのが普通ではないでしょうか?
私が思うに、これは「柔道で世界に勝つ」という考えに似ていると思います。そもそも柔道は日本からできたものなので、日本人が一番良く知っていて、強いであろう(あるべき)と信じていた日本人の方が多くいたと思います。でも、ロンドンオリンピックで日本人柔道が惨敗したことは、すごいショックでしたね。
「柔?」「Jyudo?」
日本人の柔道が惨敗した理由は色々出ていましたね。「日本の柔道はやわらで、スポーツじゃない。外国人はJyudoというスポーツで勝った。」とか、「違うルールで試合をしている」とか。中には「日本の一本勝ちの形を貫く」という選手たちも出てきました。ただ残念にも、こういう選手たちは、負けてしまった人が多かったですね。でも、彼らはとっても格好良く見えました!
これを、コア・コンピタンスの視点から見たら、どうでしょう?
私は、柔と呼ぼうが、Jyudoと呼ぼうが、両方とも「木の実」の部分に相当するエンド・プロダクツだと思います。
逆に、エンド・プロダクトの善し悪しで勝負が決まるのであれば、Apple社のiPadは、とっくの昔に、他社製品に負けていると言われています。でもiPadは、いまなお強い。これは、Appleが「タブレット」という木の実で勝負しているのではなく、それを支える根っこと幹で勝負しているからだと言えるでしょう。
グローバルの勝負はエンド・プロダクツではない
勝負はエンド・プロダクツにあるのではなく、それを支える木の根っこと幹にあると思います。なので、実だけに気を取られて「勝負の商品」を選ぶと、グローバルでは惨敗してしまうこともありえるのです。
グローバルへの進出は、あくまでも木の根っこが深く、しっかりと生えている分野で勝負してくださいね!
もっと知りたい!
次のブログ記事は、「コア・コンピタンスを洗い出す方法」ご紹介しますね。
もしご自分の会社で、コア・コンピタンスのワークショップをご希望であれば、是非パスファインダーズ・ジャパンのウェブサイトをご覧になって、声をかけてください。
Mahalo!
注釈
パワートレーン:エンジンで発生させた動力を車輪やプロペラに伝える装置の総称。参考:kotobank.jp
「とっくの昔に、他社製品に負けている」:コア・コンピタンスと関連した概念をサイモン・シネック氏が紹介していますーWHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う